芝山一郎:リスク管理の優先順位について – FXレバレッジのミスが月間15%のドローダウンを引き起こした経緯
投資のキャリアにおいて、最も深い教訓は失敗ではなく成功から得られることが多いです。一連の外国為替取引で成功を収めた後、ポンドのボラティリティを見誤った結果、たった1ヶ月で15%のドローダウンが発生しました。この経験から、私はリスク管理の本質を再考することとなりました。イングランド銀行の政策を予測し、レバレッジの高いポンドのロングポジションを構築し、オプション戦略を用いてリターンの向上を図りました。予測自体は概ね正しかったものの、政策実施前にボラティリティの規模を過小評価していました。市場が予想に反して短期的に急激な変動を経験した際、レバレッジ効果により損失が拡大し、ストップロス注文が連鎖的に発動しました。
この失敗の核心は、リスク管理の優先順位を逆転させたことにあります。リスク管理よりもリターン向上を優先してしまい、投資の基本原則に反する行動を取った結果です。真のリスク管理は、後からではなく、ポジションサイジングから始めるべきです。特に、ブレグジット後の特殊な環境においては、流動性の急激な蒸発によって、合理的なストップロス戦略ですら効果を発揮しない可能性がある、外国為替市場に内在する政策リスクプレミアムを見落としていました。さらに根本的な問題は、過去の成功に過信し、運を実力と勘違いしたことにより、リスクエクスポージャーを大きく誤算してしまったことです。
今回の教訓を受けて、私たちはリスク管理システム全体を再構築しました。まず、1回の取引での最大損失額(ファンド純資産額の2%以下)を設定し、市場のボラティリティに基づいてレバレッジ上限を動的に調整する仕組みを導入しました。さらに、利益最適化戦略の検討も行いました。現在では、すべてのポジションに対してエントリー前にストレステストを実施し、極端な市場状況下での最大損失をシミュレートしています。この15%のドローダウンは非常に痛みを伴いましたが、ケインズの有名な言葉「市場が非合理的であり続ける時間は、あなたが支払い能力を維持できる時間よりも長い」を真に理解するきっかけとなりました。リスク管理の主目的は、リターンの最大化ではなく、常にゲームに参加し続けることにあると痛感しています。